バーニーズNY 帽子デビュー

   シルクハットから鳩が飛び出したり、とんがり帽をかぶった女の子がほうきにのって空を飛んだり、帽子は私たちの想像力をかき立て、現実と幻想の境界をふっと忘れさせる。長谷川ゆかの作る帽子も、夢を現実にするような不思議な力を呼び起こす。
   絵画や版画作品で90年頃からアーテイストとして注目を集める長谷川は、幼い頃から、洋裁達者な母に、自分の頭に浮かんだドレスを作ってもらっていた。渡米後、母親のように気軽に頼める人がいなくなり、技術を身につけたいと、偶然通りかかったファッション界の登竜門、FIT (ファッション工科大学) の中に入ってみた。 洋裁専門学校だと思い込んでた長谷川は、その日のうちに入学を居ッ科され、ミシンの使い方を習う事から始まり、3年後には北京で開催されたインターナショナル コンテストにアメリカ代表として参加するまでになっていた。”素材を触っているうちに、ふと形が思いつき、自分に布を巻いて、鏡の前でハサミで切る。"過程を通してうまれる作品は思案のけっかではなく、感性と偶然が出会う瞬間の賜物である。 自身や友人、また町で知り合った人といった特定の個人のために世界に一つしかない帽子や洋服を制作をしてきた。
   その長谷川の帽子がバーニーズ ニューヨークの バイヤーの目に留まり、8月から ニューヨークを始め、 シカゴやロスなど全米の店_で発売されている。 今回は合計50個という注文を受け、"正直大変だった” というのが長谷川の感想。 帽子一個の制作時間は約2週間。感覚で制作し型を使用しないため、アシスタントは使わず、全て自分の手で作り上げた。
自分の頭の変わりに、既成の模型を 使ってサイズを調整したり、”同じものを繰り返すのは面白くない"という自身の意向に反して、一つのデザインの複数制作を要求されたりと、ビジネスの現実と直面した。"お金中心のビジネスに追われて、自分を消耗してしまいたくない。 追加注文がきたら逃げるかも”とチャーミングな笑顔で話す。
   "帽子をかぶると、多少の緊張感が生まれ、偶然のチャンスを見逃さない。それが切っ掛けになり、色々と面白いことが起こる。”と話す長谷川は、自作の防止や洋服に身を包み、街を生き生きと歩く。長谷川の帽子はかぶる人に、自身という魔法の力を与えるようだ。 
                                                                    ---平野真弓
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